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東京都新島村におけるスマートグリッド施設視察同行記

2017年12月14日 掲載

東京都心から南に約160kmの太平洋上に伊豆七島の一つ、新島(東京都新島村)があります。この新島に今、電力事業、設備関係者等から熱いまなざしが注がれています。NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、平成26(2014)年から実施している「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」(通称:新島スマートグリッド事業)としてフィールド実証試験を東京都新島村において行っています。新島スマートグリッド事業では、電力の需給運用に影響を与える風力発電の急激な出力変動(通称:ランプ)に着目し、再生可能エネルギーの予測技術や出力の変動を抑制する出力制御技術を高度化させ、予測と出力制御、需給運用の基本的な手法を確立することをねらいとしています。この取り組みによって、出力が不安定な変動電源から、出力を予測・制御・運用することが可能な変動電源に改善することで、再生可能エネルギーの系統拡大を目指すとしています。
この事業の最大の特徴としては、現在新島、式根島で運用している実際の電力系統(配電電圧6kV)により、再生可能エネルギーが電力系統に大量に導入された場合に解決するべき課題の検証を行っていることです。

◎実際の配電系統による再生可能エネルギー導入の実証試験設備を視察◎

新島実証試験設備 図1:新島実証試験設備

さる9月26日(火)、27日(水)の2日間、一般社団法人日本内燃力発電設備協会(今永 隆 会長、東京都港区芝)が実施した“新島スマートグリッド実証設備”施設視察会に同行しました。以下は、新島視察同行記です。
新島スマートグリッド実証試験は、NEDOの委託事業として、東京電力グループ(ホールディングス株式会社、パワーグリッド株式会社)が再生可能エネルギーの出力予測・出力制御と、電力系統側の運用制御とを組み合わせて新島及び式根島の島内の電力系統が再生可能エネルギーを最大限受け入れられるよう検討・評価を行い、東光高岳株式会社が分散されて設置されている複数の発電設備や蓄電池システム等を対象として、様々な分散型制御を協調させる「分散型制御協調システム」の開発とその効果検証、システム面・電力供給信頼性の評価をそれぞれ分担して進めています。
NEDOの新島村の実証試験設備は、島内14箇所(新島9箇所、式根島5箇所(割愛)、式根島は行政区域として新島村の管轄です)に設置されたシステム群で構成されています(図1参照)。 新島(式根島を含む)の電力需要規模は、約1,900〜4,400kW、ディーゼル発電機出力7,700kW、再生エネルギー出力合計約1,100kW(太陽光発電出力500kW、風力発電出力約600kW)となっており、新島と式根島は海底ケーブルで連系されています。

◎今回視察した発電設備(新島島内)◎

内燃力発電所外観 写真1:内燃力発電所外観 蓄電池設備と変電設備 写真2:(a・左)蓄電池設備/(b・右)PCS設備 阿土山風力発電設備 写真3:阿土山風力発電設備 大原太陽光発電設備 写真4:大原太陽光発電設備

◆東京電力ホールディングス新島内燃力発電所◆
(写真1.内燃力発電所外観)
島内の電力を供給する内燃力発電所。発電設備容量は、2,500kW×1基、2,000kW×1基、1,200kW×1基、
1,000kW×2基、いずれもディーゼル発電機。
◆東光高岳新島電気所◆(写真2(a)、(b))
新島内燃力発電所構内に設置されており、蓄電池(リチウムイオン)設備(500kWh×2基、写真2(a))とPCS(パワーコンディショナ1,000kW×2基(国内製1基、海外製1基)、写真2(b))設備。
◆阿土山(あづちやま)風力発電設備◆(写真3)
再生可能電力として設置された風力発電機(水平軸プロペラ型、定格出力300kW、ローター直径33m、高さ41.6m、2基設置)と変電設備(蓄電池容量500kWh)、PCS(左、出力500kW)
◆大原太陽光発電設備◆(写真4)
再生可能電力として設置された太陽光発電設備(パネル容量318kW(255W出力、多結晶モジュール1,440枚)、PCS出力315kW。
◆新島漁港◆
製氷用ブラインチラー(冷凍能力78kW、消費電力35kW)が設置されています。

NEDOの新島村における実証試験は、平成26(2014)年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に盛り込まれた「2030年のエネルギーミックス(電源構成)」の実現を想定した技術的課題への克服が基になっています。風力発電をはじめとする再生エネルギーを最大限電力系統に連系することを目的とした実証試験は、5年間の研究期間が終了する平成31年度まで行われることになっています。

(同行記者:事務局長 杉山文和)













【耳より情報】

平成30年度の第57回電気科学技術講演会にむけて、新島プロジェクト事業(東京都新島村で実証試験中)を取材してきました(上記参照)。
平成30年の講演会の「2019年スマートグリッドイノベーション」(仮題)の企画実施に反映します。これからは電源の多様化が各地で進むと思われますが、電力系統に再生エネルギーが大量導入される事で、どのようなことが想定されるか、予測・制御・運用は如何になされるべきかなど、その対応のモデルケースが新島プロジェクトであるといえます。
明年の講演会では、電力系統の専門講師から将来展望も含め最新技術をご紹介されることになると思われます。
乞う、ご期待!

◎講演会開催日時:平成30年4月20日(金) 13:00〜17:00
◎講演会場:東京都新宿区立四谷区民ホール9階
(東京都新宿区内藤町87番地、最寄駅は東京メトロ丸の内線・新宿御苑前)
◎入場無料